突然ですが、「コソボ」って、何語だと思いますか?
実は、コソボで最も使用されているアルバニア語では、コソボのことを「コソボ」と言いません。
セルビア語では「Косово」、英語では「Kosovo」で両方「コソヴォ」という発音になり、日本語もこの呼び方から「コソボ」という表記が一般的ですよね。
でも、アルバニア語では「Kosova」または「Kosovë」と書き、発音は「コソヴァ」「コソヴ」に近いです。(ここでは便宜上「コソバ」「コソブ」と書くことにします)
文法で変化する「コソバ」と「コソブ」
さて、「コソバ」と「コソブ」、どうして2通りあるかというと、アルバニア語は、名詞の末尾が文法によって変化するからなのです。
どういうことかと言いますと、英語の「the」にあたる定冠詞がついた形は「Kosova(コソバ)」、そうでない不定冠詞形では「Kosovë(コソブ)」になるのです。
日本語では地名が統一した表記になっていない!
当サイトでは、コソボの地名については、基本的にアルバニア語を使用しています。そこで問題となってくるのが、各地名で、定冠詞形を使うか不定冠詞形を使うかということ。
例えば、コソボの首都は、アルバニア語では定冠詞形の「Prishtinaプリシュティナ)」または不定冠詞形の「Prishtinë(プリシュティン)」ですが、日本では「プリシュティナ」と表記されています。つまり、ここでは定冠詞形が採用されているわけです。
ということは、他の地名もすべて定冠詞形にすべきよね…と私は思っていました。そして、そのつもりで記事を書いていました。が、途中で迷いが生じてきたのです。
それは、コソボの世界遺産について書いていたときのこと。
世界遺産である中世の修道院や教会があるのは、デチャン、グラチャニツァ、ペーヤ、プリズレンの4都市…。
ん?いや待てよ。デチャン(不定冠詞形)、グラチャニツァ(定冠詞形)、ペーヤ(定冠詞形)、プリズレン(不定冠詞形)…。一貫してないよなコレ。なんで私は定冠詞形と不定冠詞形をごちゃまぜに書いているんだ?
そもそもプリズレンは、日本で恐らく首都プリシュティナの次に知られている(と言っても一般的には全然知られていない)都市ですが、プリズレンはプリズレン。他の表記は見たことありません。
だけど、これって不定冠詞形なんですよね。定冠詞形なら「Prizreni」、つまり日本語で書くなら「プリズレニ」になるのです。
えーーー!なんでーーー!!
「プリシュティナ(定冠詞形)」なのに「プリズレン(不定冠詞形)」…。もし「プリシュティナ」だったら、「プリズレニ」になるはず。そしてもし「プリズレン」なら「プリシュティン」にすべきはずのに…。
確かに私も、プリシュティナはプリシュティナ、プリズレンはプリズレンと言いたい!いや言っている。定冠詞も不定冠詞もごちゃまぜに使ってる。
なんでだ!?
理由は不明だが、ごちゃまぜ表記なりのルールを発見
ということで、試しにウィキペディアで「コソボの郡」というページを見てみました。
そこでワタクシ、発見をしたのです!
地名のうち、不定冠詞形の語尾が「ë」で終わるものは定冠詞形が採用されており、それ以外は不定冠詞形が採用されていることを!!!
だから!だからプリズレンはプリズレンなのねーーー!!!
アルバニア語では、不定冠詞形の語尾が「ë」で終わるものは、大抵の場合、定冠詞形では語尾が「a」に代わります。
例えば「Prishtinë(プリシュティン)」→「Prishtina(プリシュティナ)」、「Gjakovëジャコヴ」→「Gjakovaジャコヴァ」となるわけです。
ついでに英語版のウィキペディアでコソボの地名を見てみましたが、やっぱり英語でもこのルールが適用されていました。というか、日本語の表記は英語の表記に倣っているのかもしれません。
結論。当サイトではルールに則りごちゃ混ぜ表記をいたします
結局、なぜ定冠詞形または不定冠詞形で統一しないのかは不明のまま。発音しやすいからか?でも、これですっきりしました。
私も、地名の不定冠詞形が「ë」で終わるものは、定冠詞形に変えた形で、それ以外のものはすべて不定冠詞形で書くことにいたします!堂々とそういたします!