これほどシンプルな材料で、めんどくさい作り方の料理があるだろうか…。いやない!!もう先に一度言わせてください。よくそんな料理思いついたな!!
コソボの伝統料理界で、以前ご紹介した「ピテ」と双璧をなすのが、今回の主役「フリー(Fli)」です。
バルカン地域やトルコに「ピテ」と似た食べ物を見つけられても、「フリー」に似た食べ物は見つけられないのではないかと思います。ある意味で真の伝統料理と言えましょう!それではご紹介しましょう!フリーです!!
もう本っっ当に作るのめんどくさい
ピテと同じく、ベースとなる生地は、基本的には小麦粉と水と塩を混ぜたもの。ただし、パン生地のようなピテと違って、こちらはクレープのような、かなり水っぽい生地になります。
そして問題の作り方なのですが、まずこれを直径50センチくらいの丸いでっかい焼き型(ピテでも同じの使います)に、スプーンで等間隔に花びらのような形に薄く垂らします。そしてこの常態で一度焼きます。
焼いた後、先ほど開けておいた隙間にまた生地を垂らして焼きます。
もうお分かりでしょうか…。そうなんです。これを4〜5センチほどの厚さになるまで延々と繰り返すんですね。
猛烈にめんどくさいです。めちゃめちゃ時間かかります。お昼目指して作るなら朝8時から作り始めても間に合いません。
ちなみに、日本のオーブンは火力が足りなくてどうしてもうまく焦げ目が入らないんですが、本来はまだらにしっかり焦げ目が入ります。
焼いてる間も次の作業があるので手持ち無沙汰になりがちでストレスたまります。
いつの時代のどなたか知りませんが、本当によくぞ、よくぞこんな料理を生み出されましたなあ!!!!
諸行無常の剥がし食い
食べ方なんですが、あんなに苦労して層を作り上げたのに、一枚一枚剥がして食べるんですよね…。
確かに重なったままだと団子感が出て食べにくいし食感もイマイチになりそうとは思うんですが、なんかもったいない〜
味はクレープとクロワッサンの中間…っぽい
気になる味ですが、そうですね〜。クレープのようなモチモチ食感に、時折焦げた部分のカリカリが香ばしさと共にアクセントになっていて、さらにクロワッサンのリッチな風味っぽいものを感じながら、小麦本来の旨みを楽しめますね…。ええそうです、一言でうまく説明できないです!!
味つけは潔く塩のみなんですが、サワークリームやバターの力でどことなくクロワッサンを思い起こすテイストになっているのでしょう。
つまり「フリー」はパラドックスを料理にしたやつだ
主食にしてメインディッシュであるフリー。具もないし、炭水化物と油と塩だけの食べ物なので、なんか食べることに罪悪感を覚えます。
なんだろうこの感じ。
すごくシンプルな材料なのに、すごく不健康な背徳の食べ物。
すごくシンプルな材料なのに、めちゃめちゃ作るのめんどくさい食べ物。
めちゃめちゃめんどくさいやり方で作り上げた層を、一枚ずつ剥がしちゃう食べ方。
繊細な作り方なのに、無骨で荒々しく、しかしどこか品のある味。
ずっしり重いのに食べ始めたらなんか止まらなくなって胃もたれしちゃう食べ物。
うへーー!まさに食べるパラドックスじゃありませんか!!
とは言えフリーは美味しいです
なんかこんだけ書いてると、フリーってあんまり美味しくなさそうだなって思われた方もいるかもしれませんね。
だがそれは誤解です!!確かに、美味しいか美味しくないか聞かれたら、正直返答に困ります。いや、美味しいと答えて差し支えないとは思うんですが…。
フリーはなんか美味しいとかいう物差しで測るものじゃないというか…。いや、美味しいんですけど。難しいな〜。
無性に食べたくなるときがある味なんですけど。フリーでしか満たせない何かをフリーは持ってるんですよね。
きっと食べたら分かってもらえるんじゃなかろうかと思います。コソボのレストランで食べられるところもあるので、機会があればぜひ食べてみてくださいね!
それか、もし私がコソボ食レストランを開いたら、1日一皿限定(前日までの要予約)でお出ししますよ。まあ絶対開かないけどね!