ルーツはコソボ!サッカースイス代表「シャチリ」と「ジャカ」

コソボで最も人気があるスポーツは、恐らくサッカーでしょう。コソボの人たちは、ヨーロッパ各国のリーグ戦や国際試合で大きなゲームがあるときは、スポーツ中継をやっているカフェに出かけて、みんなで大画面を見ながら楽しみます。

サッカーのコソボ代表チームも歴史は浅いですが、なかなかの奮闘ぶりを見せているんですよ!

でも、今回はコソボ代表ではなく、スイス代表のお話です。なぜスイス?と思うかもしれませんが、実は、スイスにはコソボから移住した人がたくさんいるのです。

はかせ
コソボは失業率が高いから、他のヨーロッパ諸国に移住する人がたくさんいるんだ。紛争中に難民として移住した人もいるよ

なんと、サッカーのスイス代表のレギュラー選手の中で、半数近くがコソボにルーツを持つ選手だったこともあるんですよ。

今回はその中でも特に有名な二人の選手の紹介をしたいと思います!

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グラニット・ジャカ

グラニット・ジャカ

(Granit Xhaka)

ジャカ

生年月日:1992年9月27日

出身地:バーゼル(スイス)

国籍:スイス、コソボ、アルバニア

ポジション:MF/DF

所属チーム:アーセナルFC

(2019年11月18日現在の情報です)

グラニット・ジャカは、現在イングランドの強豪アーセナルでプレイしているMF/DF。2011年からはスイス代表としても活躍しています。

おほしちゃん
どうでもいいけど、グラニットじゃなくて「グラニト」という表記もあるみたいだね。小さいツがないと、違和感があるから、ここでは「グラニット」にしてるよ。
はかせ
違和感を例えて言うなら、「フットボール」を「フトボール」と呼ぶような…
おほしちゃん
もしくは「ティーカップ」を「ティーカプ」と言うような…

ジャカ自身はスイス生まれなのですが、両親はユーゴスラビア出身のアルバニア人です。

ジャカの父親は、コソボの大学で学んでいたときに、コソボのアルバニア人の権利向上を訴えるデモに参加し、政治犯として刑務所に収容されています。そして1990年、武力紛争が起きる前にスイスに移住したのです。

ガーディアンのインタビュー記事の中で、ジャカは父親を自らのロールモデルであり、父親のコソボでの体験は自分の心を深く打つものだとして、「父親から何かを成し遂げるための強さを学んだ。だからピッチでも強いメンタルを持っていられる」と語っています。

ジェルダン・シャチリ

ジェルダン・シャチリ

(Xherdan Shaqiri)

シャチリ

生年月日:1991年10月10日

出身地:ジラン(コソボ)

国籍:スイス、コソボ、アルバニア

ポジション:MF

所属チーム:リヴァプールFC

(2019年11月18日現在の情報です)

おほしちゃん
日本では「シャキリ」表記もあるけど、アルバニア語の発音では「シャチリ」だよ

ジェルダン・シャチリは、2010年からはスイス代表として活躍しているMFで、ヨーロッパの強豪チームを渡り歩き、現在はリヴァプールFCでプレーしています。

シャチリは1991年にコソボで生まれ、それから間もない1992年に家族とともにスイスに移住しています。

シャチリが子どもの頃、シャチリの両親は、レストランの皿洗いや道路工事、ビルの清掃などの仕事をしながらコソボの親戚に多額の仕送りをしていました。一家が自分たちのために使うお金はわずかだったそうです。

紛争が激化してから、コソボにあるシャチリの家は略奪・破壊され、親戚の家は燃やされたと言います。

スイスへの移住と、幼少期にサッカーにのめり込んだことについて、シャチリはこう語っています。

スイスで平和に暮らす地を見つけられたことが本当にうれしい…(中略)…ピッチの上では自由で、何も心配することはなく、解放されるんだ。

Stoke on Trent Live, “Stoke City star Xherdan Shaqiri recalls war-torn childhood in bid to help refugees”

物議を醸した「双頭の鷲」ポーズ

Embed from Getty Images

サッカー好きなら知らない人はいないシャチリとジャカですが、2018年6月22日、サッカーワールドカップの試合中にとったある行動により、世界的に注目されてしまいます。

それは、スイス対セルビアの試合でのこと。共にスイス代表として出場していたシャチリとジャカは、それぞれゴールを決めたあと、胸の前で手をクロスさせる「双頭の鷲」ポーズをとったのです。

アルバニアの国旗
アルバニアの国旗。多くのアルバニア人が、この黒い双頭の鷲を自分たちのシンボルとしている

双頭の鷲は、アルバニアの国旗の象徴であり、このポーズは明らかにコソボ紛争を意識し、セルビアに向けたものでした。

この結果、ピッチに政治を持ち込んではいけないという規則に違反したとして、二人は1万スイスフランの罰金が科されました。

この行為については、日本でも様々な報道がなされて、ネットにはいろんなコメントがあふれていました。私にとってはかなりの関心事だったので、気になっていろいろ読みましたが、二人のことをコソボのアルバニア人の代表のように捉えて、同情的に見るメディアが大半だったように思えます。

挑発行為はナンセンス

Embed from Getty Images

私の目には、あの行為はとても挑発的なものに映りました。

対戦相手は確かにセルビアの代表です。だけど、シャチリの親戚の家を燃やしたのは彼らではありません。ジャカの父親を刑務所で虐待したのも、彼らではありません。

そして、ジャカとシャチリがアルバニア人で、ルーツがコソボにあったとしても、彼らは紛争を直接には体験していません。

もちろん、家族や親しい人から聞いた話を通して、子どもの頃からずっと抱いていた様々な思いはあるでしょう。

そして、彼らのこれまでの人生は簡単なものではなく、いろいろな感情が爆発したのだろうと思います。

ですが、この一つのパフォーマンスで、どれほどの人が傷ついたり、嫌な気持ちになったりしたでしょう。私がセルビア人だったら、とても悲しいし、腹を立ててしまうかもしれません。

「アルバニア人だから」「セルビア人だから」というような乱暴な理屈で、新たな憎しみの種がまかれるようなことがあるのは悲しいです。率直に言って、とてもとても残念でした。

ポジティブなニュースが流れてほしい!

シャチリやジャカのように、コソボにルーツを持ち、そのことに誇りを持つ人が世界で活躍するのは、コソボの人にとっても誇らしいことです。

いろいろと私の思いを書きましたが、和解に向かって進むのは簡単なことではなく、憎しみを乗り越えるのは本当に難しいことだと思います。

だけど、コソボのことでは、もっとポジティブなニュースが流れてほしいです。

これからもコソボからスーパースターがどんどん出てきて、明るい話題を振りまいてくれることを期待しています!